NIEに関する一般記事

事実と真実を伝える報道を肝に/コラム「東西南北」一般記事バックナンバー

県NIE推進協議会長の堀泰樹大分大学名誉教授

―うそと誠、まちがった宣伝と真実とを区別するには、科学が真理を探究するのと同じようなしかたで、新聞や雑誌やパンフレットを通じて与えられる報道を、冷静に考察しなければならない―▼これは1948年に登場した中学・高校の社会科教科書「民主主義 上」の記述である。「報道に対する科学的考察」という項目に載っている。教育現場での新聞活用(NIE)に取り組む県NIE推進協議会長の堀泰樹大分大学名誉教授=顔写真=が講演の中で紹介した▼当時は敗戦から間もない頃。教科書には戦時中の軍国主義をぬぐい去り、民主主義を教えようとの狙いがこもっている。民主主義の定着を図る連合国軍総司令部(GHQ)の指示もあったに違いない。民主国家をつくるには民主的な報道が欠かせないとの認識に立っており、報道に理性的な態度で接して真実を見つけ出す習慣を―と解説する▼裏を返せば、戦時中の報道が冷静ではなく、事実に基づいてはいなかったということだ。満州事変以降、報道姿勢は好戦的になり、太平洋戦争に入ると、大本営発表の誇大もしくは虚偽の戦果をそのまま報道した。戦争をあおり、言論統制下だったとしても国民を欺いた罪は大きい▼二度とあの時代に戻ってはいけない。事実と真実を伝える報道をしているかどうか、絶えず検証しなければと肝に銘じる。

このページの先頭に戻る