NIEに関する一般記事

論説/新学習指導要領と新聞一般記事バックナンバー

NIE全国大会の公開授業で、社説をグループで読み解いていく中学3年生

NIEのさらなる深化に期待

 新しい学習指導要領が2020年度から小学校を皮切りに順次、実施される。指導要領の総則には、情報活用能力を育てるために新聞の利用が明記された。教育界と新聞界は授業で新聞を教材として使うNIE(ニュースペーパー・イン・エデュケーション=教育に新聞を)の推進に力を入れている。新要領の実施を機に、NIEの一層の深化を目指したい。
 新要領は「主体的・対話的で深い学び」を掲げる。知識や技能の習得とともに思考力や判断力、表現力を身に付け、学ぼうとする力や人間性を養うことを重点にしている。社会に出てからも学校での学びを生かせる人間の育成である。
 新要領には多くの教科で新聞の利用を促す記述が見られる。情報活用能力の向上について、コンピューターや情報通信ネットワークなどに加え、新聞の適切な活用も盛り込んだのは、新聞を重要な教材と認識した結果だろう。
 NIEは1930年代に米国で始まり、日本では85年、日本新聞協会の新聞大会で提唱された。社会性豊かな青少年の育成や活字文化の発展を掲げ、教育界と新聞界が協力して全国で推進活動を展開してきた。全都道府県にNIE推進協議会ができ、活動の拠点となっている。
 大分県での推進協設置は2010年。16年には「新聞でわくわく 社会と向き合うNIE」をスローガンに大分市で第21回NIE全国大会が開かれ、県内でのNIE推進に弾みをつけた。
 新聞協会はNIE実践校を指定し、一定期間新聞を提供して授業で使ってもらう活動を進めている。本年度は全国で545校、県内では大分市鶴崎小、同市戸次中、大分舞鶴高など8校が指定を受け、工夫を凝らして新聞を活用した授業を行っている。指定校以外でも積極的に取り組んでいる学校もある。
 県内のNIE推進は教員らの自主研究組織である県NIE実践研究会の役割が大きい。12年に発足した。毎月1回研究会を開き、実践報告や新聞を使った教材作りのワークショップを行っている。関心を抱き、新たに参加する教員もおり、広がりが見える。
 新聞は記事だけでなく、イラストや写真も数多く掲載しており、小学校低学年の授業でも利用が可能だ。実践研は教員が新聞の多様な使い方を知る場になっており、さらに多くの参加を望みたい。
 新聞の使い方として「主権者教育の教材に有効」との意見がある。新聞は社会の動きをいち早く捉えた記事を載せている。社会を読み解く力を養うのに適している―というのである。
 選挙権が18歳からとなり、主権者教育の重要性が叫ばれているが、政治や社会の在り方をどう教えればいいか悩んでいる教員も少なからずいるだろう。新聞活用は解決方法の一つだが、そのためにも新聞社として教材になり得る紙面作りを肝に銘じなければならない。
 NIEは息の長い取り組みである。学校だけでなく地域や家庭とも協力しながら、効果的な活動を不断に続けていく必要がある。



ポイント

学習指導要領

 全国どこでも一定水準の教育を受けられるようにするため、文科省が定める。各学校で教育課程を編成する際の基準となる。戦後すぐに試案として作ったが、現在のように大臣告示の形で定めたのは1958年。以後、ほぼ10年ごとに改定している。

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