NIEに関する一般記事

この人に聞く 大分県NIE実践研究会代表 佐藤由美子さん一般記事バックナンバー

 〈新聞を授業の教材に使うNIEの取り組みが県内の学校で広がりを見せている〉
 NIEは1930年代に米国で始まり、世界70カ国以上で展開されている。日本は90年代ごろから本格化したとされるが、明治時代から国語や社会で新聞を読ませたり新聞を作らせていた先生もいた。
 県内は2010年6月に県教委と大分市教委、校長会、県内に本社か総局・支局のある新聞・通信8社で県NIE推進協議会を設立。12年に教員たちが自主組織の研究会をつくり、現場で生かせる効果的な手法を学び合っている。県内各地の幼稚園や小、中、高校の教員、教育行政関係者ら幅広い人たちが参加する研究会は「大分方式」として全国的に注目されている。
 かつて個人レベルで活動していた先生たちは横のつながりができたことで、やる気が高まっている。
 〈教育現場に新聞はどう生かされているのか〉
 例えば社会科。単に公共事業と言われても子どもたちはピンとこないが、道路開通の記事を添えると「あの道はこの前、通った」と身近に感じる。教科書の知識と実社会を結び付けられる。
 また、新聞にはいろんな情報が載っている。子どもたちに気になった記事を選ばせ、話し合い、考えを述べてもらうことで主体性が身に付く。新聞のレイアウトや見出しの付け方などを学べば情報を発信する際の表現力が向上する。
 激しい変化とグローバル化が進むこれからの時代は新しい知識・情報・技術が飛躍的に重要性を増すといわれる。必要な情報を的確に選び、それを基に行動する能力が今まで以上に求められている。
 〈子どもたちの活字離れ、新聞離れが指摘されている〉
 新聞を購読しない家庭が増えているのは確かだろう。だったら、私たちが気になった記事を切り抜き、コピーして配ればいい。新聞を見れば、世の中にはいろんな人がいるし、いろんな出来事が起きている。子どもたちに情報格差を生じさせてはならない。
 もちろんメディアはテレビやインターネットなど多様にあり、新聞も会社ごとに論調が違ったりする。各メディアの長所、短所を知ってもらうことも重要だ。
 幼稚園や低学年には新聞の内容は難しい。新聞紙を使い工作をさせたり、気に入った写真を選ばせるなど新聞に親しむことから始めてほしい。
 〈8月に大分市で第21回NIE全国大会が開かれる。県内外から千人以上の教育・新聞関係者が集まり、論議を深める。期待することは〉
 大会スローガンは「新聞でわくわく 社会と向き合うNIE」。特にターゲットとしたいのは県内の先生たち。「難しそう」と二の足を踏んでいる教員にNIEを始めるきっかけにしてもらいたい。
 経験上、準備に多少、手間取ることもあるが、子どもたちは楽しみながら学び、実力も付く。目を輝かせながら学ぶ姿は教師の喜び。会場へ足を運び、公開授業や特別分科会などを通じてNIEの醍醐味(だいごみ)を感じ取ってほしい。
 新聞社には目の前の読者だけでなく、子どもたちも読んでいると意識しながら紙面作りを進めてほしい。子ども向けの記事は以前より増えてはいるが、写真の見せ方や文章表現の仕方など、まだまだ工夫はできると思う。
 大分合同新聞には地元紙ならではの身近な記事をこれからも充実させてほしい。知っている地域、人物のことであれば、それだけ子どもたちの興味は高まる。(聞き手、写真は報道部・中野暁男)

 さとう・ゆみこ 1960年、豊後大野市三重町生まれ。大分大学教育学部卒業後の83年から国語教師。大分市内の中学校を中心に赴任し、県教委大分教育事務所を経て2014年から大分市寒田小学校長兼寒田幼稚園長。日本新聞協会認定のNIEアドバイザー。NIE全国大会大分大会の運営委員長を務める。

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