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新聞のコラムを真剣に書き写す児童たち=16日、大分市寒田小

大分県教育発展の契機に

 NIE(エヌアイイー)(ニュースペーパー・イン・エデュケーション)をご存じだろうか。訳して「教育に新聞を」。学校の授業で新聞を教材として使い、子どもたちの読解力や課題解決力を高める取り組みだ。教育界と新聞業界が協力して推進活動を展開してきた。活動成果を発表する第21回NIE全国大会大分大会が来年8月、大分市で開催される。22日、実行委員会が発足した。
 大会は新聞の役割や活字文化の大切さを再認識する場となり、新聞を読んで自分の考えを持てる子どもを育てるきっかけとなる。大分県教育の発展につながることへの期待も大きい。
 NIEは1930年代の米国で始まり、日本では85年、静岡での新聞大会で提唱された。新聞にはニュース、論説、コラム、話題、投書などさまざまな記事が載っている。新聞を読むことで社会の動きに関心を持ち、視野を広げるのに役立つ。出来事に対するさまざまな意見や見方も載っており、子どもたちが記事を読んで自分の考えを持てるようになるだろう。
 児童生徒の読解力の低下や活字離れが指摘される中、生きた教材である新聞を教育の場で使う有用性が認められるようになってきた。現在の学習指導要領は新聞の活用を明記した。記事を討論や感想文の題材にしたり載っている用語の意味を調べるなど使い方は多岐にわたる。
 日本新聞協会の調査では、新聞を用いた授業をすることで新聞を読む子どもが増え、記事について家族らと話し合ったり、自分で調べる態度も身に付くようになったという。経済協力開発機構が行った「生徒の学習到達度調査」によると、新聞を読む頻度が高い子どもほど総合読解力の得点が高いとの結果が出ている。
 大分県では2010年に県NIE推進協議会が発足して本格的な活動が始まった。中でも特筆すべきは12年からスタートしたNIE実践研究会だろう。NIEに関心を持つ教員が県内全域から毎月1回自主的に集まり、実践報告や意見交換をしている。新聞を使った教材作りなどワークショップもある。研究成果は授業に生かされ、NIE活動の深まりに役立っている。
 大分大会のスローガンは「新聞でわくわく 社会と向き合うNIE」。「わくわく」するような新聞の楽しさを知ってもらい、新聞を読むことでさまざまな考え方や興味、アイデアが「わく」という思いを込めている。「社会と向き合う」は新聞を読んで子どもたちが世の中に目を向け、社会とのつながりに気付いてほしいとの願いがある。
 強調したいのは、NIEは学習成績の点数アップだけが狙いではないということだ。自分で考え、課題を解き明かす力を付けてもらう―。真の学力向上こそNIEの目的に他ならない。
 大会開催は終着点ではなく、次の段階への出発点である。大会を機に県内でNIE活動がさらに広がり、生き生きとした子どもたちが育つことを期待したい。



~NIE全国大会大分大会~

 16年8月4、5の両日、大分市のホルトホール大分をメーン会場に開催される。日本新聞協会が主催し、県教委、大分市教委の共催。県NIE推進協議会と大分合同新聞社が主管する。全国から教育関係者、新聞関係者約1200人の参加を予定。記念講演やパネルディスカッション、公開授業、実践発表などがある。

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