NIEに関する一般記事

コラム「東西南北」一般記事バックナンバー

 これも“逆転の発想”と言うのだろうか。教育のグローバル化を考えるとき、「英語ができないからグローバル化できない」と後ろ向きにならず、「世界でも有数の難しい言語である日本語ができる」と前向きにとらえるべきだ―との提言を、過日、徳島市で開かれたNIE全国大会での講演で聞いた▼講演したのは教育社会学者の苅谷剛彦オックスフォード大教授。苅谷教授は「日本は非西欧圏で最初に産業化に成功した国。戦争や公害など負の遺産も含め、日本語で書き残された多くのテキストは知識の宝庫であり人類の宝」と指摘▼「こうした知識が人類にどんな意味を持つのか、世界の人々のためにどう役立てられるかを考える子どもに育てることが、グローバルな人材の育成につながる」と話した▼「子どもたちの日本語の習熟度を高めることで、先人が残した知識がより豊かな形で次世代に伝わる。そんなポテンシャルを持つポジションにいるのが教師」という苅谷教授の話を聞き、責任の重さを痛感した教育関係者も多かったはずだ▼新聞を活用するNIEも日本語の習熟度を高めるための有効な手だての一つだろう。「書かれたことを読むことは思考の根源。自分で書くことによってその思考はさらに深まる」と苅谷教授は言う▼2年後のNIE全国大会は大分市で開かれる。県全体の取り組みの歴史はまだ浅い大分だが、それこそ逆転の発想で「大分だからこそできるフレッシュなNIE」を発信する機会にしたいものだ。

このページの先頭に戻る