NIEに関する一般記事

私の紙面批評 「想像力を育むNIE」一般記事バックナンバー

貞包博幸 (さだかね・ひろゆき)

アジア竹文化フォーラムおおいた代表 貞包博幸

 「学べるニュース」はジャーナリスト池上彰氏の人気テレビ番組だが、本紙でも「ニュースを学ぶ」取り組みが進行中だ。月~土曜日の夕刊には、ふるさと紹介やスポット、ホビー、美術、おおいたの偉人など幅広い記事が掲載されている。それも小学生から高校生を対象とし、写真も多く、内容は平明でいて深く、学び取るものは多い。
 その一つに、新聞を教材とした学校の教育現場を紹介するNIE(Newspaper In Education=教育に新聞を)の欄がある。今年2月1日付では、竹田市久住小学校の6年生が本紙論説「大分県人口激減へ」をテーマに、女性も働きやすい町づくりなどについて主体的に議論している様子が紹介された。このような取り組みは若者の活字離れに歯止めをかけるのにも有効だろう。
 昨年9月、1周年を迎えた県NIE実践研究会で筆者は「新聞が社会で果たすべき役割」について話す機会を得、次のようなことを紹介した。
 20世紀前半、ドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーは全人教育の必要性を唱えた。それは知識や技術に偏ることなく、知・情・意を調和的に発達させ、豊かな人間性を備えた児童を育てる教育のことであった。その教育が目標としたものは現状の正しい認識とその下に過ちのない未来を築くことにあったが、そこに要求されるのが豊かな想像力であるとされた。
 東日本大震災でいえば、地震や津波の脅威の知識と多くの人を失った悲しみの感情体験から何を学び、安心の持てる日本の未来をどう築くかは想像力の問題である。
 本紙でも昨年11月25日付朝刊で、小説家いとうせいこう氏の作品やインタビューを通じ、「想像力の意味を問う」がポスト3・11の問題として提起された。今年2月10日付朝刊「識者コラム・現論」では、ノンフィクション作家・柳田邦男氏が東日本大震災による関連死、JR北海道の脱線事故などを取り上げ、「感性を取り戻し、想像力を発揮できるようにしなければ、この国の未来はない」と警鐘を鳴らした。
 これからの地域づくりに未来を描く若者の想像力は欠かせない。NIEは想像力を育む上でも極めて意義深い。そのための材料提供にますます力を注いでいただきたい。

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