おおいた遺産

天念寺修正鬼会

[2009年03月02日 14:45]

荒々しく舞う「鬼」

福もたらす「仏」

 旧暦正月、国東・六郷満山ではかつて多くの寺院で鬼が舞った。今それは、半島の西側では天念寺(毎年)=豊後高田市、東側では成仏寺と岩戸寺(隔年交代)=いずれも国東市=に伝わる修正鬼会(しゅじょうおにえ)だけとなった。いずれも国指定の重要無形民俗文化財。
 「鬼」というと現代の人々はどのような姿を思い浮かべるだろうか。頭は角を持つ巻き毛、顔は赤や青、口には牙。巨体に虎の皮のフンドシを締めて、金棒を携える姿が一般的だろう。悪鬼とも言うように邪悪な存在で、節分の豆まきでも外に出される。強いというイメージもあり、さらに人間の祖霊であったり、時には恨みや怒りで変身した怪物であったりする。
 しかし、六郷満山の鬼は違う。形相こそ怖いものだが、それは不動明王などの化身であり、仏そのもの。嫌われ追い払われるものではなく、半島に春を運び、幸福をもたらす存在。それは安穏と五穀の豊熟、万民快楽(ばんみんけらく)の願いをかなえてくれる。
 縁起によると、満山を開いた仁聞菩薩(にんもんぼさつ)が養老年間(八世紀初頭)に六郷の本寺二十八カ寺の僧侶を集めて「鬼会式」六巻を授けたのに始まる。以来、日本全国六十余州の神仏を勧請し、修正会を開いたのである。
 旧暦正月、全国の主な寺院では年の初めの祈願儀式として修正会を勤めるところが多いが、鬼会もその一つの形。修正会の修法や作法はさまざまだが、国東の鬼会は修験道の呪術(じゅじゅつ)要素も加わった独特の行事である。
 オニヨ(鬼夜)とも呼ばれるように、夜が主体。禊(みそぎ)に始まった会式(えしき)は松明入(たいい)れから声明(しょうみょう)、献灯と進み、優しい鈴鬼に加えて災払鬼(さいはらいおに)、荒鬼の登場で頂点へ。炎に荒らぶる鬼が舞い狂う「鬼走り」である。最後に鬼鎮めで終わる時には夜も更けている。
 かつて全寺院で行われていた名残の鬼面は、現在およそ百面が二十余寺に伝わる。

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