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騒動めぐり、論点を整理NIEのバックナンバー

東中津中学校3年生

自分の意見根拠見つける

赤ちゃんザルの命名問題を報じた新聞記事を使って批評文の書き方を学ぶ3年生の生徒たち

 「社会の出来事を批評し新聞に投稿しよう」。6月、東中津中学校の3年生が国語の授業で批評文の執筆に挑戦した。題材は、大分市の高崎山自然動物園の赤ちゃんザルに、英国王女と同じ「シャーロット」と名付けて賛否が起きた騒動。説得力のある批評文を書くためには、さまざまな意見を整理し、その根拠を示すことが大切。生徒は騒動を報じた新聞記事や読者の投稿記事から「賛成」「反対」意見の根拠となる要素を探し出し、論点を絞る作業に取り組んだ。
 3年3組の教室では28人の生徒が騒動を伝える新聞記事を手にしていた。記事は前回授業で読み込んでおり、本文の中から騒動をめぐる動きや意見の一つ一つを抜き出し、付箋紙に書き込んでいた。
 長松涼子教諭が「バタフライチャート」と呼ばれるチョウのような形をした表を黒板に貼った。「サルの命名問題」とのテーマが中央に書かれ、その右側に「賛成」と「大賛成」、左側に「反対」と「大反対」の欄が設けられている。「それぞれの欄に想定される意見を書き込み、その下に根拠が書かれた付箋紙を貼ってください」と長松教諭。
 生徒は早速、作業に取り掛かった。賛成の立場だったらどんな意見が出るだろう―。それぞれ考えて表に書き込み、悩みながら付箋紙を貼る場所を決める。
 15分ほどたったころ、長松教諭が「自分で気が付かなかったこと、いいなと思うことなどの情報を取り入れるため、班になって情報交換してください」と呼び掛けた。生徒は友人とチャートを見せ合いながら意見を交換。
 「赤ちゃんザルにどんな名前を付けようと自由だ」。ある男子生徒は「大賛成」に分類した意見を紹介した。すると別の男子生徒は「英国王女の名前は両親が一生懸命考えて付けた名前。他の国の動物に同じ名前を付けるのは失礼」と、反対の意見を示した。
 また「サルも人間も平等だ。人間の名前を動物に付けるケースは他にもあるのに、今回はなぜこんなに批判するのか」との賛成意見も。ある女子生徒は「大反対」の意見の根拠として「日本人の思いやり、気配り、美徳はどこへいったのでしょう」とした新聞投稿の記事を紹介した。
 長松教諭が「根拠がどれに当たるのか難しいですね」と授業を振り返ったところで終了のチャイム。この次の授業では、400~500字の批評文の執筆に取り掛かった。

授業の狙い

賛成、反対を比較、多面的な思考を

長松涼子教諭
「新聞記事からさまざまな意見を読み取って」と話す長松涼子教諭

 単元の目標は、新聞記事を適切に引用し、関心のある社会の出来事について説得力のある批評文を書くことができるようになること。批評文を書くためには、主観だけでなく多面的に論じることが必要になる。そのためには自分の意見を裏付ける根拠を、目的や意図に応じて引用したり、相手に効果的に伝えるために論理の展開を工夫することが求められる。
 自分の意見を裏付ける客観的資料として新聞記事を活用し、バタフライチャートという思考ツールを使って多面的に物事をとらえさせたい。チャートは、賛成、反対、大賛成、大反対それぞれの意見と理由を書き入れるため、物事を両面から見ることを促せる。思考の過程を可視化することもできる。
 新聞記事にはさまざまな意見が書かれており、自分では思い付かないような意見の根拠も明確になる。

生徒の感想

納得できる部分もあった弦本莞晟(かんせい)君(15)

 班のみんなと意見を交流させ、きずなが深まった。命名問題では賛成の立場。反対している人はサルを下等に見ていると思う。反対側の意見を聞き、自分の意見が変わることはないが、納得する部分もあった。

それぞれ違う見方がある井上栞里さん(14)

 私の考えは「大賛成」なので、最初はなぜ反対の人の意見について考えなければならないのかと疑問に思った。意見を交わし、反対の人の言い分も分かった。それぞれ違う意見があり、学ぶところがあった。

もしぼくがサルだったら奥村次夢(じむ)君(14)

 もしぼくがサルだったら、誰かに付けた名前ではなく、ぼくのための名前を付けてほしいので反対。みんなに説明したら納得してくれた。それぞれ分からないところを聞き合い、意見をまとめるのはいいことだ。

記事から考え引き出した庄司悠乃さん(14)

 班で賛成、反対の意見が言い合えてよかった。意見を整理する時に「こんな考えがあるんだ」と納得することができた。記事から、賛成、反対の意見を引き出すことができたので、これを基に批評文が書けそう。

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