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五輪開催の意義とは?NIEのバックナンバー

別府市上人小学校6年2組

効果、経済だけではない

2020年に開催される東京オリンピックについて勉強する児童たち

 2020年に東京で開催されることが決まった夏季五輪とパラリンピック。招致活動に携わった選手らが喜びを爆発させた決定の瞬間の様子は記憶に新しい。別府市上人小学校6年2組の総合的な学習の時間は、この喜びの理由を考えるところから始まった。
 「日本中をこれほど大喜びさせるオリンピック開催のメリットって何だろう」。担任の原田裕輔教諭(36)が26人の児童たちに問い掛けた。児童たちは配布された“五輪特需”に関する大分合同新聞コラム「東西南北」(13年9月9日付)や「友刊キッズ」(同21日付)を読み、「競技場や道路などが整備される」「世界中から選手や観客が日本にやって来る」「日本が獲得するメダルの数が増えるかもしれない」といった意見を出した。
 「確かに大きな経済効果が見込めるのは間違いなさそうだけど、それだけの理由だろうか。オリンピック自体の魅力や素晴らしさって何だろう」。原田教諭が問い直すと、児童たちは再び考え始めた。
 そこで2000年のシドニー五輪で、最後まで諦めない姿が世界中に感動をもたらした競泳のギニア代表、エリック・ムサンバニ選手の映像を流すとともに、五輪の精神を紹介した記事「ニュースを学ぼう」(同16日付)を新たに教材として配布。児童に五輪の意義について考えさせた。
 班ごとの話し合いでは、各自が考えを持ち寄った。子どもたちは自らの意見を書いたホワイトボードを班の友人たちに見せ合いながら考えを説明し、各班の代表者がまとめて発表した。
 「スポーツを通して生きる力を与えてくれる大会」「開催に向けて一人一人が自分にできることをするようになり、国が一つにまとまる」「世界中の人と仲良くなれる」―。26通りの答えが並んだ。
 「新聞記事を読むことで、五輪の開催という一つのニュースからいろいろなことが見えてきます」と原田教諭。最後に近代五輪の父と呼ばれるクーベルタンが掲げた「スポーツを通して平和な世界を実現する」との理想を紹介した。
 原田教諭は「経済効果だけでなく、世界中の人たちの気持ちを豊かにする力が五輪にはあることを忘れないでほしい。スポーツの素晴らしさに間近で触れられる日を楽しみにしましょう」と締めくくった。

授業の狙い

スポーツの魅力、考え、親しむ子に

原田裕輔教諭
「五輪の本来あるべき姿を知って」と話す原田裕輔教諭

 2020年夏季五輪の開催地が東京に決まった。日本中が歓喜に沸き、子どもたちも7年後に思いをはせ、楽しみにしている様子がうかがえる。
 子どもたちは1964年の東京大会が日本の戦後復興に大きな役割を果たしたことを歴史の授業で学んだ。
 今回の授業ではまず、五輪開催が景気に与えるカンフル剤的な“五輪特需”を期待する声が大きいことを新聞記事から読み取らせたい。その上で、スポーツが持つ力、与えてくれるものに着目させ、五輪の本当の魅力、素晴らしさとは何なのかを考えさせる。
 クーベルタン氏が提唱したオリンピズム。世界平和に寄与できる国際的な競技会であることが五輪の理想とされる。五輪の本来あるべき姿を知り、将来にわたってスポーツに親しみ、関わっていく子どもに育ってほしい。

児童の感想

7年後の東京を見てみたい大塚瑚士郎君(12)

スポーツ観戦が好きなので、五輪の東京開催を今から楽しみにしている。特に気になるのがサッカー。スタジアムで日本代表を応援できたらいいな。7年後に東京の街がどんな風になっているのかも見てみたい。

バドミントン続けていたい山本彩貴さん(12)

バドミントンをしている。五輪が開かれる7年後も続けられていたらいいなと思う。新聞には子ども向けに書かれている記事もあり、想像していたより分かりやすかった。授業も面白かった。

記事読み、新しい発見あった原田剛(ごう)君(12)

新聞で面白そうな記事を見つけたら読むようにしている。興味があるのはスポーツ。授業でいくつか記事を読んで新しい発見があったので、これからはできるだけ別の分野の記事も読むようにしたい。

人々の気持ちにも良い影響帆足奈菜子さん(12)

五輪が経済面だけでなく、人々の気持ちの面にも良い影響をもたらすことを学べた。あらためて東京で五輪が開かれることをうれしく思った。機会があったらぜひ会場で競技を観戦してみたい。

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